ヴァルテッリーナ・カゼーラ

ワインよりミルクを産する地で作られたチーズ「ヴァルテッリーナ・カゼーラ」

ヴァルテッリーナ・カゼーラ

レオナルド・ダ・ヴィンチが「ワインよりもミルクを産する地」と称したアルプスの渓谷のひとつ、ヴァルテリーナ渓谷で作られているチーズです。素朴な山のチーズならではの美味しさが感じられます。

7世紀から作られている伝統の味

イタリアのロンヴルティア州にあるヴァルテリーナ渓谷で作られているヴァルテッリーナ・カゼーラは、伝統的なハードタイプの山のチーズです。レオナルド・ダ・ヴィンチはこの渓谷を「ワインよりもミルクを産する地」と称したそうですが、きっと平地が少なく畑には向いていない土地だったのでしょう。この地方には高地牧場があり、毎年夏には牛やヤギがたくさん放牧されます。夏の間に放牧された牛のミルクはイタリアを代表するチーズ、「ビット」になりますが、その他のミルクはヴァルテッリーナ・カゼーラに加工されます。その歴史は7世紀にまでさかのぼるとも言われており、名前はチーズを熟成させる小屋(カゼーラ)に由来します。

1年熟成された深みのある味

ヴァルテッリーナ・カゼーラの熟成期間は最低でも60日ですが、1年ほど熟成させて出荷されるものも多いです。オレンジがかった表面にはうっすらとカビが生えていますが、内部はきれいな乳白色をしていて、中心にいくほど白くなっています。熟成期間が長いので、水分はだいぶとんでいるのですが、ぼそぼそ、ボロボロとまではいかず、むちっ、ねちっとした強い弾力性を感じます。味は熟成した分ミルクの旨みがギュッと濃縮されたようなコクがありますが、独特な癖や匂いもなく、プロセスチーズの旨みをもっと複雑にしたような味がします。ナチュラルチーズ初心者でも安心して食べることができる味でしょう。そのまま薄く切って食べる他、パスタやチーズにかけたりすることも多いとか。特に、そば粉のパスタにかけるとチーズの美味しさがぐんと引き立つのだそうです。

今も自然の営みに沿って作られているチーズ

ヴァルテッリーナ・カゼーラはそれほど生産量の多いチーズではありません。DOP(イタリアの生産地保護名称)には指定されていませんが、昔ながらの作り方を守って今でも生産が続けられているのです。今ではほとんどのチーズが工場生産となり、原料のミルクも1年中変わらぬ味のものです。しかし、伝統的な製法を守っているチーズは、季節によって生産量が変わったり、そもそも作ることが不可能だったりします。ヴァルテッリーナ・カゼーラは、冬の間は干し草を食べて作った牛のミルクから、そして春や秋は牧草を食べて作られたミルクから生産されます。当然季節によってミルクの量も味も違います。まるでワインのように造られた季節によってチーズの味が違うというのは面白いですね。(やはり干し草より牧草を食べて作ったチーズの方が味が良いそうです)
ヴァルテッリーナ・カゼーラは食通たちを魅了するような華やかな味ではありません。しかし、チーズをかみしめると厳しい自然の中を牛と一緒に行き伸びてきた人々の逞しさが感じられるような素朴な旨みがあふれてきます。屋内で食べるよりもパンに挟んでピクニックのお弁当に出も持っていきたくなるようなチーズですよ。ワインに合わせるのならば、しっかりとした味の赤ワインがお勧めです。