ロンカル

口伝によって伝えられてきたチーズ「ロンカル」

ロンカル

フランスのお隣の国でありながら、スペインは雨が少なく山岳地帯が多いために痩せた土地が多く、牛よりもヒツジやヤギが多く飼育されてきました。当然チーズもヒツジやヤギの生乳を原料としたものが多くなります。ロンカルもそのひとつ。スペインのDOP(原産地呼称認定制度)が作られるずっと以前から作り方が定められてきたチーズでもあるのです。

節制が美味しいチーズを産んだ

スペインのナバラ州、ピレネー山脈の中にあるロンカル渓谷一帯で作られているヒツジの生乳を原料としたロンカルはハードタイプのチーズです。ピレネー山脈一帯といえばフランスでもスペインでも山のチーズの名産地として知られています。ロンカルもそのひとつ。しかも、原料となるミルクを採るヒツジはLatxa(ラチャ種)とNavarra(ナバーラ種)のみ、と定められてきました。この決まりができたのはずっと昔のこと。ピレネー山脈一帯は土地がやせていてろくな作物が取れないため、人々は牧畜に頼った生活を長年続けていました。生活を豊かにするためには、飼っているヒツジやヤギを増やすのが最も手っ取り早い方法です。しかし、無造作に家畜を増やせば餌となる植物が食べつくされ、環境が破壊される恐れもあるのです。ピレネーに暮らす人々は誰から教わることなく経験で家畜を無造作に増やす危険性をわかっていたのでしょう。Latxa(ラチャ種)とNavarra(ナバーラ種)の2種のヒツジだけを数をコントロールしながら飼育し続けてきたのです。その結果ピレネーの自然は今に至るまで豊かなまま守られ、高品質のチーズが作られ続けられたのです。

口伝によって作り方が伝わってきたチーズ

ロンカルには正確なレシピがDOPに指定されるまでありませんでした。親から子へ口伝で作り方が伝えられてきたのです。今も工房によって味に微妙な差があるそうですよ。ロンカルは1年中作られるものではなく、羊がミルクを出す7月~12月までの期間限定です。この時期羊たちは豊かな草が生い茂る高地牧場へ放牧され、思う存分草を食べて良質なミルクを出すのですね。このミルクを原料にして作られ、4か月の熟成期間を経て出来上がったチーズは脂肪分の高いこってりとした味わいです。ヒツジのミルクは牛のものに比べて脂肪分が高く、若干の獣臭さがあります。その匂いも食べなれれば気にならないのですが、初めて食べた人はちょっと苦手意識を持つかもしれません。そのような場合は、ハチミツやジャムなどの甘みを添えてみましょう。獣臭さをうまく緩和してくれます。甘いものとしょっぱいものの組み合わせは日本人にはなじみの薄いものですが、ロンカルはそれほど塩味が強くないのでザラメせんべいのような感覚で食べてみましょう。熟成が進むヒツジのチーズは独特のピリッとした辛みが出てきてチーズに食べなれた人向けの味になります。

そのまま食べてもサンドウィッチの具材にしても美味しい

ロンカルは長年ピレネー山脈の人々の命をつないできた大切なチーズです。毎日食べても食べ飽きない素朴な美味しさのため、そのまま食べる他サンドウィッチの具材にしても美味しいでしょう。ベーコンや野菜を添えればしゃれた前菜にもなります。また、熟成が進むと水分が飛んで固くなるので、すりおろしてパスタやサラダ、リゾットなどにかけても美味しいですよ。