ラスケーラ

ラバが運びやすいように四角くなったチーズ「ラスケーラ」

ラスケーラ

「山のチーズ」という言葉があるように、ヨーロッパの山間部は多くのセミハードチーズやハードチーズの発祥の地とされています。食糧事情の厳しい山間部では、栄養価の高いミルクは貴重な食物。何とかして保存したいと思った結果多くのチーズが生まれたのです。ラスケーラもそんな山のチーズの一種なのです。

まるで座布団のような形のチーズ

ラスケーラはイタリアのピアモンテ州クオネ県にあるラスケーラ村で誕生したチーズです。この村のあたりは2000m級の山々に囲まれている農耕には不向きの地でした。人々は山の間のわずかな平地を利用して牛などの家畜を飼い、チーズを作ってふもとの村と交易をして生活必需品を得ていたのです。つまりチーズは貴重な食糧であると同時に半ば貨幣の代わりだったのですね。そんなラスケーラは荷物を運ぶ家畜「ラバ」の背に積みやすいように平たく四角いまるで座布団のような形をしています。時代が下るにつれ、平地でもラスケーラが作られるようになりましたが、その時はごく一般的なチーズのように丸い形をしていたようです。現在ではその特徴的な形こそラスケーラの証、ということで平地で作るものも四角い形に統一されています。

高地牧場の牛のミルクで作られたものは高級品

ラスケーラは牛の生乳で作られたハードタイプのチーズです。工房によっては羊やヤギのミルクを加えて作ることがありますが、基本的には牛のミルクオンリーで作られています。
ラスケーラは1年中作られていますが、特に夏、標高900m以上の高地牧場で放牧された牛の生乳から作られたラスケーラはラスケーラ・ダルペッジョと名付けられ、ワンランク上の扱いをされています。ミルクを出す家畜の環境によってミルクの味がまったく変わってしまうことをチーズの産地の方はよく知っているのですね。ハードタイプのチーズですが、ラスケーラは熟成して1か月目から出荷されます。若いうちはチーズというよりバターといった感じの滑らかでミルクの甘みの強い味がします。今ではこちらのほうが人気だとかで、多くのラスケーラが若いうちに出荷されてしまうそうですが、熟成が進むにつれて表皮が灰色になり、身が締まってコクが増します。ヨーロッパのナチュラルチーズというとちょっとクセのある味と匂いが初心者にはハードルが高く感じられるものですが、ラスケーラは非常にマイルドで穏やかな味わいをしていて、チーズ初心者の方でも美味しいと感じられるでしょう。

赤ワインと共にゆっくりといただきたい味

上記したように、最近はくせがなく脂肪分の高い味のチーズがヨーロッパでも人気が高くなり、ラスケーラも熟成わずか1カ月程度のものが一番売れているそうです。しかし、ラスケーラの本当の味を知りたいのなら、やはり数か月熟成させたほうが良い、というのがチーズ職人の皆様の意見だそう。熟成せて水分が飛んだ分ミルクの成分が凝縮するわけですから、牛乳のかすかに感じる乳臭さや粘っこく重い後味がより強く感じられるようにもなります。しかしその反面ミルクの旨みも濃縮しているわけですから、チーズが大好きという方はこちらのほうが美味しく感じられるでしょう。同郷のフルボディノ赤ワインと合わせるとため息が出るような美味しさです。