カチョ・ディ・フォッサ

熟成は何と穴の中?毎年秋に掘り出すチーズ「カチョ・ディ・フォッサ」

カチョ・ディ・フォッサ

フレッシュチーズやプロセスチーズなどの一部を除いてチーズには「熟成」という工程があります。チーズを数か月、長くて数年寝かせることにより水分を飛ばし、保存性を高め旨みを濃縮させるのですが、この熟成させる場所は地域によって様々です。専用の部屋で行われるところもありますし、ロックフォールのように洞窟で熟成させるものもあります。
でも「カチョ・ディ・フォッサ」を熟成させるのは、なんと土の中なんですよ。

誕生のきっかけは戦争?

イタリアのエミリア・ロマーニャ州で作られているカチョ・ディ・フォッサはハードタイプのチーズです。その昔、ペコリーノ・ディ・フォッサと呼ばれていました。今でも旧名のほうが日本では有名かもしれません。「ペコリーノ」の名前が示すように、ヒツジの生乳が原料です。フォッサとは「穴」のという意味。その名前の通り3か月熟成させたチーズを布でくるみ、穴の中でさらに熟成させるのです。このチーズが誕生したのは15世紀の頃。その頃のヨーロッパは戦争が絶えず、兵士が村々の食料を略奪しにくることも珍しくありませんでした。そんな略奪者から貴重なチーズを守るために地中に埋めたのが誕生のきっかけと言われています。ワインの搾りかすに漬けて熟成させる酔っ払いチーズといい、イタリアのチーズは戦争がきっかけで生まれたものも少なくないのですね。

チーズを掘り出す日は決まっている?

一般的にチーズは熟成具合を見て、順次出荷されるものですがカチョ・ディ・フォッサはかつては地中から掘り出される日が11月25日の「サン・カトリーヌの日」と決まっていました。しかし今ではこのチーズの人気が高まり、チーズを掘り出す日は年々早まっている、と言われています。チーズを掘り出す日は、カチョ・ディ・フォッサを求めて遠くからやってくる人がたくさんいるそうです。今はチーズを土中に埋める、といっても無造作に穴を掘ってポイポイ放り込んでいくわけではありません。穴を掘った後、その中で火を焚いて消毒した後、底には木を敷き、葦と藁で壁面を覆います。使い捨ての室(むろ)を作るような感覚ですね。チーズの味は気候によって変化しますが、雨の多い年のほうが味が良いそうです。あまりからからした天気が続くとチーズの水分が抜けすぎて割れてしまうのだとか。大歓声と共に引き上げられたチーズは工場に運ばれ、改めてパッキングされて販売されるのです。

トリュフのような味

ヒツジの生乳は牛のものに比べて脂肪分が高いので、コクのあるチーズができます。このチーズを土中に埋めて熟成させると、なぜかトリュフのような風味がつくのだそうです。
トリュフのあの高貴な味と香りは土中で育つことで培われるのですね。ねっとりと濃厚な舌触りとミルクの旨みの後に感じられるトリュフの風味。人々が夢中になるのもうなずける味です。そのまま食べる他に、すりおろしてパスタやリゾットにかけたりしても美味しいでしょう。ハードタイプのチーズは1年中出回っていますが、カチョ・ディ・フォッサは12月~1月の間が最もおいしいと言われています。つまり土から出してちょっと置いておいた頃ですね。このチーズの真価が知りたければぜひ冬に買い求めて食べてみてください。