アボンダンスチーズ

アルプスで作られる力強い山のチーズ アボンダンス

アボンダンスチーズ
アボンダンスとは生産地に近い谷の名前。「豊饒な」とか「多量な」という意味もあり、現代ではアボンダンス種という牛も存在します。その名の通り豊かな味わいのチーズです。

アルプスの山に抱かれたチーズ

スイスとの国境近く、フランスのオート・サヴォワ県にある「アボンダンス谷」という所にある修道院で作られ始めたというハードタイプのチーズ。それがアボンダンスです。アボンダンスとは谷の名前であり、修道院の名前であり、そして、チーズの原料である生乳を生産する牛の種類の名前でもあるのです。上下の面に比べて側面が内側にへこんでいるのが特徴で、昔はそこにロープを巻いて運搬したとか。現在では側面に製造者と製造日を表すガゼインマークが記されています。マークの形が楕円のものは農家製。四角いのは工場制ですので、どこで作られたのか一目でわかりますね。

美味しさの秘訣は脂肪分

フランスの山のチーズは元々乏しい食糧を無駄にしないように造られ始めたものです。ですから、ミルクからバターをとったバターミルクでチーズを作ることが多く、脂肪分の少なさが特徴でした。しかし、アボンダンスは絞ったミルクをそのまま使ってチーズを作ります。豊富な脂肪分から生まれたコクがこのチーズのおいしさの秘訣なのです。

古い外皮でチーズをケア

アボンダンスのもうひとつの特徴は、熟成させている間に古いチーズの外皮を塩水で溶かした「モルジュ液」というものでチーズを丁寧に拭くことです。そのため。アボンダンスはハードチーズでありながらどこかウォッシュタイプのような通好みの匂いを漂わせるチーズになります。熟成後のチーズは力強く、ナッツを思わせるコクがあります。スイスのラクレットと似たような風味がありますが、「モルジュ液」の効果かこちらのほうが香りや味が複雑です。このチーズはそのまま食べても美味しいですが、ラクレットのようにオーブンで溶かしてパンやジャガイモにつけて食べるとまた違った美味しさがたのしめるでしょう。

とっても少ない生産量

アボダンスはとても美味しいチーズなのですが、ネックは生産量の少なさ。もともと農家で細々と作られていたチーズだったので、生産量は70トンほどだったそうです。現在では工場生産されるようになったために、生産量は600トンまで伸びましたが、それでも同じ地域で作られているコンテやボーフォールに比べるととても少ないのです。ですから、日本ではめったにお目にかかれないチーズ、といえるかもしれません。ごくたまに通販で取り扱っていたり、デパートのチーズ売り場で売られていたりするので、興味のある方は買ってみられるとよいでしょう。ただし、長い距離を旅してきたアボンダンスは、日本に到着した時点で熟成が進んでいるものが多いので、表皮からかなりきつい匂いが漂っている場合があります。そんなときは、ちょっともったいないですが厚めに表皮をむくと匂いを気にすることなくチーズを味わうことができます。

アツアツのチーズに日本酒を。

チーズにぴったりのお酒といえばワインですが、アボンダンスは日本酒にも良く合うチーズです。純米酒などの力強い味の日本酒に、熱して溶かしたアボンダンスを合わせてみましょう。その際に、ジャガイモではなく山芋にチーズをつけるとより和風の味わいになるそうです。両方が手に入ることがあったらぜひ試してみてくださいね。