チーズの熟成

菌類が大活躍。チーズの熟成について。

チーズのパッケージに「12ヶ月熟成」などと書かれてあるのを見たことがある方も多いでしょう。熟成はチーズにとって大切なもの。それによって様々な味や風味が生まれるのです。

菌類によって行われる熟成

一部のフレッシュチーズやプロセスチーズを除いて、チーズを作る上で欠かせないのが熟成です。その昔、まだ冷蔵庫がなかったころ、食物の保存は大変でした。せっかく牛がおいしいミルクを出してくれたのに、そのまま放っておいては腐ってしまいます。そこで、レンネットによりタンパク質と水分を分離し、タンパク質を固形化したのです。水分が少なくなったことで、保存期間がミルクのままだった時よりも伸びましたが、それでも不十分なので試行錯誤を繰り返し、塩水につけて一定の湿度の場所に置いて乳酸菌を繁殖させる方法を編み出したのです。
キムチやピクルス、そして日本の糠漬けなどと同じく乳酸菌発酵によって保存性を高めているのでチーズだって牛乳の漬物といえるかもしれません。
乳酸菌は繁殖した場所の酸性値を強めます。ちょっと古くなったキムチや糠漬けが酸っぱくなるのは乳酸菌のせいなのです。酸性値が強くなると、酸性の環境下では繁殖できない雑菌が死滅し、腐敗やカビを防いでくれるのです。
しかし、乳酸菌だけがチーズの防腐を防ぎ、風味を豊かにしてくれるわけではありません。次からはチーズとカビの素敵な関係を説明していきます。

チーズに白カビが付着すると……

カマンベールなどは外側が真っ白なカビにおおわれています。この白カビは胃酸と同じタンパク質分解酵素を出し、チーズを柔らかく溶かす性質があるのです。食べごろになったカマンベールの中がとろりと柔らかいのは白カビのせいなんですね。また、白カビは乳酸菌が分泌する乳酸を食べてしまうので、チーズはキムチや漬物のように酸っぱくならず、乳酸菌も酸度が上がりすぎて死滅するということもありません。つまり、美味しいままのチーズが長持ちする、というわけです。

チーズにアオカビが付着すると……

ロックフォールに代表されるのが、アオカビタイプタイプのチーズですね。アオカビがチーズに付着するとリパーゼという酵素が出ます。これは脂肪を分解する能力がありますので、アオカビチーズ独特の風味が生まれてくるのです。その代りタンパク質が分解する能力はいまいちなので、アオカビタイプのチーズはしっかりとした食感のものが多いのですね。余談になりますが、アオカビはチーズの表面ではなく中に繁殖しますがこのアオカビは酸素を好むんです。ですから、通気性の良い洞窟なので金串で穴をあけたチーズを熟成させる、などの工夫が見られます。今でも洞窟がチーズを美味しくしてくれているのです。

ウォッシュタイプは……

ウォッシュタイプの場合はチーズの表面を塩水で洗いながら熟成させます。これによってチーズの表面に枯草菌の一種であるリネンス菌が繁殖するのです。このリネンス菌、なんと納豆菌の仲間。納豆も日本人が慣れているだけで、相当強い匂いですから、ウォッシュタイプのチーズの匂いが敬遠されがちなのも当然かもしれません。リネンス菌は繁殖するとチーズの表面にタンパク質と脂肪を分解する膜を張ります。この膜が空気中の他の雑菌が繁殖するのを防いでくれているのですよ。ウォッシュタイプのチーズは食べごろを過ぎるとだんだんと溶けて形がなくなっていくそうなのですが、その時にネバネバとした糸を引くようになります。まさに納豆ですね。